感染症に関わる塩と水のお話
村を守った塩アンチョビ
日本でのコロナ騒動も収束の気配があり、油断は禁物ですが、最近では知人がコロナに感染した話を聞いても、安静にしておけば大丈夫だという認識に変化しているような気がしています。
ご紹介する話は、塩と水がコロナに有効という意図をもったものではありませんが、感染症の歴史から、塩と水の大きな役割が見えてきました。
人類史上、最も多くの死者をだした感染症は14世紀のペストの流行で、ヨーロッパの全人口の役半分にあたる7500万人が命を落としたと推測されています。ペスト菌が猛威を振るった背景には、人口増加と都市の発生による不衛生な環境があり、富裕層は清浄な空気をもとめて農村へ疎開しました。
この渦中に一人の死者も出さなかった小さな村がありました。フランス領のコリウールという漁村でした。アンチョビ漁が盛んで、村全体が漁と塩漬けアンチョビの製造に関わっていました。男たちが穫ってきたアンチョビを、女性たちが頭と腸を取り除いて3枚におろし、塩と魚が交互になるように樽に詰めて作った塩アンチョビは、世界一美味いと言われたそうです。製造には大量の塩の備蓄が必要で、この塩がペストから村を守ったと考えられています。ペスト菌は乾燥や熱に弱く、漁村の清浄な空気と太陽光が菌を弱め、塩アンチョビの良質なたんぱく質と塩分摂取が村民たちの免疫力を高めたのでしょう。塩自体の殺菌力も働いた可能性もあります。
コレラ患者をすくう塩水
コレラについても、塩と水が感染者の命を救った記録が残っています。1971年、東パキスタンでの内戦時の難民キャンプにコレラが発生した際に、患者3700人に経口補水液(塩水)を与え、多くの患者の命を救いました。現在でもコレラの初期治療として経口補水液は有効なものとして、WHOも推奨しています。コレラ菌の感染源は汚染された水で、脱水症状をともなうひどい下痢が特徴ですが、初期に経口補水液を与えて脱水をとめれば、命に関わるリスクは低いとされています。
感染症をもたらす菌の増殖の背景には、人間自身が作り出した環境変化が必ずあり、環境破壊が進むこの先は、パンデミックのリスクは高まるばかりです。地球環境の保全と感染症対策はつながっているものだと感じますし、人類の体内自体もその一部であることを忘れてはならないと、強く感じます。
嗚呼、人類はこれから、どこへ向かうのだろう!
今日も良き塩梅に!!