カスピ海の塩漬けキャビア

カスピ海の塩漬けキャビア

キャビアの歴史

チョウザメの卵・キャビアは言わずと知れた高級食材で、現在、流通する多くのキャビアはカスピ海沿岸のロシア産かイラン産になります。

チョウザメは太古・1億8千万年も前から存在する種であり、サケと同じく産卵のために川を遡る習性があります。普段は塩水中に生息し、産卵時には真水を泳ぐわけです。

中世ヨーロッパでは、チョウザメは珍しいものではなくありふれた存在でした。産卵時期にはヨーロッパ各地の川はチョウザメであふれんばかりだったという記録が残っています。

キャビアの値段が跳ね上がるのは20世紀に入ってからです。第1次世界大戦時、イギリス兵には缶詰入りの押しつぶしたキャビアが支給されていましたが、兵は「魚ジャム」と見下していました。また、北アメリカにもチョウザメはいて、キャビアは酒場でピーナッツ程度の無料のつまみとして出されるものにすぎませんでした。(※ 参考文献 塩の世界史)

カスピ海は湖か海か?

その後、環境汚染に対応しきれなかったチョウザメは徐々に姿を消し、それとともに「キャビア」は庶民とは縁遠い高級食材になってしまったのです。

チョウザメと一口に言っても、その種類は24もあり、カスピ海ではベルーガ、オセトラ、セヴルーガの3種類がキャビア用に捕獲されています。その中で最も珍重され高値がつくのがベルーガ種で、捕獲されること稀な巨大魚です。

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カスピ海は世界で一番大きな湖ですが、その水は塩分濃度約1%程度の「塩湖」です。ここでは塩水が蒸発すると塩ができ、この塩がキャビアの塩漬けに使われました。カスピ海は「塩浸けキャビア」をつくるには最適な地だった訳です。

このカスピ海でも最近は環境汚染のため、チョウザメは減少しており、ますます天然キャビアは希少なものになってしまいました。これに代って養殖キャビアや人工キャビアが現れるのも際限のない消費需要によるものです。

カスピ海にはロシア、カザフスタン、トルクメニスタン、アザルバイジャン、イランが接し、特にロシアとイランはキャビア生産でしのぎを削っています。その背景もあって、カスピ海は湖ではなく海だと、イランが主張しているというのが面白い話。つまり湖と海では領海の定義が異なり、もしカスピ海が海であるならばイランの領海が広くなり、それに伴った漁業権も拡大するという訳です。

確かに湖とするには広すぎ、海とするには狭い??というカスピ海ですが、その西には黒海と地中海があり、東にはヒマラヤ山脈があります。

元々ここには古代テチス海が広がっていました。そのテチス海が地殻変動によって、内陸に取り残されたのが「カスピ海」であり、地下に沈んでしまったのが「ヒマラヤ山脈地下の岩塩層」なのです。

塩によって結ばれているこの地図を眺めていると大きな海の痕跡を見てとることができます。

チョウザメの祖先も古代テチス海を悠々と泳いでいたことでしょう。この先、環境汚染、キャビアを求める人間による捕獲、という試練を受け続けたチョウザメが絶滅しないように願いたいものです。

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